「ざるそば」と「もりそば」本当の違いを知ってますか?〜完結編〜
皆さんは「ざるそば」と「もりそば」の違いをご存知ですか?
一般的に「ざるそば」のほうが「もりそば」より100円程度高いようですが、器や麺、つけ汁も同じ・・・。違いといえば「海苔」がかかっているだけに見えます。
「ざるそば」と「もりそば」の違いについては諸説あります。Yahoo知恵袋などの質問サイトには同じ質問がたくさん投稿されていて人により様々な見解があるようです。
結論から言ってしまうと、現代における「ざるそば」と「もりそば」の違いは「海苔がかかっているかどうか」です。
しかしどういった経緯で「ざる」「もり」のような呼び方をするようになったのか?なぜ海苔で区別するのか?「せいろそば」との違いは何なのか?など、よくよく考えると不思議な事が多いと思いませんか?
そこで今回は「ざるそばともりそばの違い」を歴史から紐解き、どのような経緯で現代のスタイルに至ったのか徹底的に解説していきます。
目次
「ざるそば」と「もりそば」の違いを歴史から紐解く!
もりそばの歴史
日本にそばが伝わり栽培され始めたのは5世紀頃と言われていますが、現在の細長い麺で食べられるようになったのは江戸時代初期になってからと言われています。
江戸時代初期まではどのように食べられていたのでしょうか?
そばがき
そばは1000年以上にわたり実を丸ごと食べる「そば米」や「そばがき」として食されてきました。
「そばがき」はそば粉をお湯でこね茹でたり焼いたりして食べるもので、現代にほぼそのままのスタイルで受け継がれています。
そば切り
〜江戸時代初期〜
長らくそばは「そばがき」として食されてきましたが江戸時代初期に入ると、そばを細く切ってつけ汁につけて食べる「そば切り」(現在のおそばの原型)が誕生します。
「そば切り」は「そばがき」と区別するためにお椀などに盛られ、瞬く間に広く普及しました。
ぶっかけそば・かけそば
〜江戸時代中期〜
江戸時代中期、元禄の頃になるとに入るとそばをつけ汁につけて食べる方法とは別に、そのままつゆをかけて食べる「ぶっかけそば」「かけそば」が台頭してきます。
ぶっかけそば
出典「http://kevin99.cocolog-nifty.com」
一説にはせっかちな江戸っ子がそばをつけ汁につけて食べるのは面倒だということで、そばにつけ汁をかけて食べたことが始まりだとされています。
「ぶっかけそば」とは冷たいおそばにつけ汁をそのままかけたもの、「かけそば」は現代のものと同じでお湯で薄めたつけ汁をたっぷりかけたものです。
かけそば
当初この食べ方は品がないと敬遠されていたようですが、お店としても器が1つで洗い物が少なくて良いなどのメリットもあり「ぶっかけそば」「かけそば」は徐々に認知され大ブレイクしたのです。
このようにして「そば切り」は「ぶっかけそば」「かけそば」というスタイルを加えることで3つのタイプに分類されるに至ったのです。
もりそばの誕生!(そば切りから改名)
どのお店も「ぶっかけそば」「かけそば」が大流行すると、従来の「そば切り」と合わせて3種類のおそばを提供するようになりました。
すると注文の時に問題が出てきます。もともとは「そば切り」から派生したもので食べ方(つける orかける)が違うだけです。「ぶっかけそば」も「かけそば」も「そば切り」なのです。
「そば切りちょうだい!」と注文するお客にはいつも
「ぶっかけやかけそばでなくそば切りかい?」
と確認する必要があったんですね。
そこで「ぶっかけそば」「かけそば」と明確に区別するために、つけ汁につけて食べる「そば切り」の名称を「もりそば」に統一したのです。
こうしておそばやさんのメニューは「もりそば」「ぶっかけそば」「かけそば」の3種類となったわけです。
ざるそばの歴史
ざるそばの誕生
「もりそば」「ぶっかけそば」「かけそば」が人気が出てくると、江戸の街道沿いにはおそばやさんが数多く並ぶようになります。
他店との差別化を図るためにそれぞれのお店で知恵を絞り、様々なマーケティングを仕掛けていきました。
江戸(東京)深川洲崎にあった「伊勢屋」はそばを盛る器に演出を見出します。小さな竹ざるの上にそばを盛ったのです。
器に竹ざるを使うことで水切れも良く、何よりも洒落ていて「粋」ということで大ブレイクしたのです。
「ざるそば」の誕生です。
ざるそばの高級化
〜江戸時代後期から明治時代〜
深川洲崎でブレイクした「ざるそば店」は徐々に江戸中に広がり、従来の「もりそば」とは一線を画し高級路線をひた走ります。
- そばには実の中心部分のみを使った「御膳そば」を使用
- 出汁には「鰹」だけでなく高級食材の「昆布」を使用
- 当時高級調味料だった「みりん」をかえしと同量入れ寝かせることで作る「御膳返し」をつけ汁として提供
ざるそばに「海苔」をかけて提供されるようになったのは明治時代に入ってからと言われています。
このようにして「ざるそば」は「高級そば」として「もりそば」との差別化を推し進めていったのです。
「ざるそば」と「もりそば」の融合
「ざるそば」を出すお店と「もりそば」を出すお店は以前は別々でした。
しかし、安い「もりそば」目当ての客と高級な「ざるそば」目当ての客を取り込もうと、どちらもメニューとして扱う店が徐々に増えていきます。
どちらも扱うとなると、そば粉、つけ汁、器、海苔など、元は「そば切り」のはずがそれぞれ2倍の手間がかかってしまいます。
はじめのうちはしっかり別々に作っていたものが、徐々にそば粉やつけ汁、器など同じもので提供するようになり「ざるそば」と「もりそば」は融合していったのです。
そして、現代における「ざるそば」と「もりそば」の唯一の違いである「海苔」が残ったというわけです。
「海苔」はざるそばの高級化の名残りとして現代に受け継がれているのです。
せいろそばとは?
「せいろそば」とはどのようなものでしょうか?
江戸時代初期にそばを蒸篭(せいろう)で蒸して食べたことが始まりと言われています。
そばを蒸すという手法は早い段階で廃れていったのですが、お椀と異なり重ねて運ぶことができるのでもりそばの器として広く使用されるようになりました。
出典:tabelog.com
ほとんどの「もりそば」が蒸篭で盛られるようになってからは「せいろそば」と「もりそば」は同じものを指すようになっていったのです。
現代においても「せいろそば」=「もりそば」と考えて問題ありません。
たまにこだわりのお蕎麦屋さんに行くと「もりそば」ではなく「せいろそば」と記載しているところを見かけます。
これは高級な「ざるそば」に対して安い「もりそば」という古くからのイメージが影響しているようで、「もりそば」ではなくあえて「せいろそば」としているお店が多いようです。
「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」の違い総括!
これまで見てきたように、「ざるそば」と「もりそば」の違いである「海苔」には高級そばとしてかつて君臨してきた「ざるそばのプライド」が垣間見えてきますね。
以下に「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」の違いをまとめてみました。
- 「ざるそば」と「もりそば」の違いである「海苔」はざるそばが高級そばとして君臨していた時の名残り。
- 「せいろそば」と「もりそば」は同じもの。お店によって呼び方は異なる。
まとめ
いかがでしたが?
今回は「ざるそば」と「もりそば」の違いについてそばの歴史を振り返りながら解説してきました。
「海苔」は「ざるそば」が高級そばだった頃の「名残り」だったんですね。
「せいろそば」と「もりそば」は同じものだとご存知の方は意外と少なかったのではないでしょうか。
現代ではお店によって様々で、こだわりのお店などに行くとメニューの「せいろそば」が「ざる」に盛られて出てきたりします。反対にほとんどのお店では「ざるそば」がせいろに入って出てきます。
一方、老舗の蕎麦屋では今でも「ざるそば」と「もりそば」で昔のように製法や器を分けて提供しているところもあるようです。
いつかは歴史ある高級そばとしての「ざるそば」を老舗蕎麦屋で食べてみたいものですね。
おそばが好きな妊婦さんやママさんにはこちらの記事が役に立ちます。
そばの効能や赤ちゃんへのそばアレルギーの影響について詳しく説明していますのでチェックしてみてくださいね。
参考記事:「妊婦さんにそばをオススメする3つの理由とは?赤ちゃんへの影響は?」